蓮華は蓮や睡蓮の花のことであり、仏教のシンボルとなっています。 蓮は花托(花の中心部)が丸くてたくさん穴があいていて、蜂の巣の形に似ていることから蜂巣と呼ばれていて、その蜂巣が変化してハスと呼ばれるようになったと言われています。インドは暑い国で、涼しい水辺は理想の場所であり、その水面に咲く蓮華は理想の境地を表します。蓮華には泥の中にあっても、水をはじく性質があり、泥に汚されず清浄であり、とても綺麗な花を咲かせる蓮華は、仏教において煩悩を滅却し解脱して涅槃の清浄の境地を目指す境地と合致しました。 この世の中にはしんどいことや苦しいことがあり、それは避けることが出来ませんが、そんな中で徳を積んで精進し、自分なりの花を咲かせるということです。
経典には、白、赤、青などのさまざまな蓮華が登場します。その中で最も優れた気高い花とされているのが白蓮華であります。また蓮の池の美しさや涼しげな様子は浄土経典や大乗仏教の経典で、理想の仏国土の情景を表す場合の必須となっています。浄土の中の代表的な極楽浄土も蓮華の咲き乱れる素晴らしい場所です。人間界を離れて、そのような素晴らしい世界にみんなで生まれ変わりたいという願いが「一蓮托生(いちれんたくしょう)」という言葉になったようです。
インドでは仏教が起こる以前から人々に尊重されていました。インドの神話には梵天(ブラフマン)という神が蓮華から生まれ、この梵天が万物としての世界を創造されたとします。また蓮はインドの国花として親しまれていて、インド人にとっても特別な花のようです。また蓮は観音菩薩のシンボルとされています。比較的早い段階から独尊としての造像され、慈悲を体現する菩薩の代表格であります。観音から発展したグループを蓮華部とよばれます。
ターラ(多羅菩薩)はインド・チベット・モンゴル・ネパール・中国など密教が伝播した諸地域で、観音菩薩や文殊菩薩などの人気の尊格にも引けを取らない信仰を集めた仏であります。ターラとはサンスクリット語で「瞳」を意味します。観音菩薩が衆生を救い尽くせないことのために流した涙から蓮華が咲いて、その花から生まれたといわれます。また多くの仏や菩薩の台座は蓮華座といいます。仏像の台座としては最も一般的な形式で蓮の花の開いた様をかたどります。古い時代には、比較的簡単なものが多く、だんだんと段の数が多く複雑になってきたようです。
このほかに花ではなく蓮の花をかたどった荷葉座(かしょうざ)は特殊な天部にのみ使われています。踏み割り蓮華座は金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)や軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)の台座で、立像の左右の足がそれぞれ小さな蓮華座にのっている形です。