仏教美術というと一体何を想像するでしょうか。海外の映画など見ていると、よく仏像が色々なアンティークと一緒に飾られているのを何度も見たことがあります。仏教美術とはやはり仏像や仏画、曼荼羅をイメージされるかもしれません。
そもそも仏教美術とは、仏教の思想や信仰に基づいて制作された礼拝対象や、その荘厳のための建築、彫刻物、絵画や工芸などそれら全ての総称なので、仏塔や庭、伽藍に至るまで全て仏教美術といいます。仏教美術の歴史はというと、お釈迦様が入滅されたあと、その遺骨を納めた仏舎利塔に彫られた彫刻が最初だとされていますが、その後ギリシャを起源とするヘレニズム文化の影響等などにより、1世紀ごろからガンダーラでお釈迦様の記の場面やお釈迦様の仏像彫刻が作られ始めたのと同時期に、インド中央部のマトゥラーでも仏像が作られ始めました。
その後お釈迦様と同じ悟りを開いて、自他ともに救われると考える人々があらわれました。いわゆる大乗仏教の起こりであります。日本の仏教は大乗仏教で、大乗仏教の国では、僧侶にならなくても仏教の教えを信じて正しい生活をしていればいつかは悟りの境地に達することができると考えられています。
大乗仏教の影響から菩薩像などの尊像が多く作られ始め、大乗仏教の修行僧たちは現世利益と来世の救済を求める信者に造塔や造仏を功徳として、その行為を仏教僧自ら始めて信者にも寄進を勧めました。
その後大乗仏教の後期には密教が起こりました。密教(みっきょう)とは、「秘密の教え」を意味し、一般的には、大乗仏教の中の秘密教を指し、「秘密仏教」の略称とも言われます。
在来の仏教諸尊に加えてバラモン教など外教の神々や鬼神の姿を採り入れて、それまでには見られなかった異様な姿の多面多臂像(ためんたひぞう)や密教教理に基づいて新たに創作された尊像までが加わり、修法や観想(諸尊を心の中で思い描くこと)の対象としてたくさんの仏像や絵画が作られました。修法とはインドの来客をもてなす作法に由来し、本尊に対し儀軌(ぎき 儀式の実行に関する規則)に規定された作法を修して様々の祈願の成就を得ようとする修行です。その目的としては本尊を観ずることで、本尊と行者との一体化を体験(入我我入 にゅうががにゅう)することです。修法には様々な祈願の種類や対象の本尊も異なります。
これらを密教美術といい、インドを起源とする密教にもとづく美術のことを指します。
仏教が伝わった時代やそれぞれの地域で、その文化や信仰と結びつき、仏教美術が独自に発展していきました。従いまして、チベット仏教美術、インド仏教美術、中国仏教美術、日本仏教美術など様々な言葉があります。