日本に仏像が伝わったのは6世紀で、それから今日まで色々な素材で仏像が造られてきました。基本的には仏像の素材は5種類あります。それは石造、金属(銅・鉄・金・銀)、塑造(そぞう)、乾漆造、木造の5種類です。
今回はその中で石造、金属(銅・鉄・金・銀)、木造の三つを説明していきたいと思います。
日本では森林素材に恵まれていた理由から木彫仏が多く、次いで重要なのは銅像です。その多くは表面に鍍金をほどこし、髪や眼や唇などに彩色をほどこす場合が多くあります。
金銅仏は、石仏と同様に非常に耐久性があり、石とは違って金色に輝いております。
金銅仏の仏像は金属製の仏像のことで、用いられる素材の多くは銅製です。造り方としては「ロストワックス技法」といわれる技法で造られます。ロストワックス技法とは、蝋を利用した鋳造方法の一種で、奈良の大仏もこの方法で造られました。この技法は歴史が深く、古くは紀元前のメソポタミアから始まったとされます。
まず蝋で作品のモデルを作り、これを用いて鋳型を制作します。作品のモデルは一回の鋳造ごとに使い捨てとなりますので、一つの型に一つの仏像しか出来上がりません。ですので全く同じ像は作ることが出来ませんし、大量生産が出来ないので、貴重と言えるでしょう。そして一つの仏像を造るのに多くのプロセスがあり、最低でも数ヶ月を要します。鋳造とは、金属材料を融点よりも高い温度で溶かし、鋳型に流し込み、冷やして固める金属加工方法の一種です。
石仏は切石を用いて彫刻を行う独立像と自然の岩山に直接に彫る磨崖仏(まがいぶつ)の二つに大別できます。
磨崖仏(まがいぶつ)は非常に大きいものがあり、移動することができません。山の中での造像が多いので修験道や特殊な信仰との結び付きが深いです。数世代に渡って彫刻されることもあるようです。
初期の仏像であるガンダーラ仏やマトゥラー仏は石仏であり、地蔵菩薩や馬頭観音は道端でよく見かけることができます。彫刻技法としては石ノミ(たがね)と金槌で石の表面を丸掘りする方法、岩壁などを彫る浮き彫りや、線刻彫りの技法などあります。
日本では森林素材に恵まれていた理由から木彫仏が多く、木造の技法は大きく別けて二つに大別されます。一木造り(いちぼくづくり)と寄木造り(よせぎづくり)です。
一木造り(いちぼくづくり)は必要の大部分を一本の木から掘り出すもので、歴史的には一木造りの方が古いです。
体幹部から離れた部分、腕や天衣、持物(じもつ)などは別材を用いますが、完全に1本の材から造ることもあります。
材木の干割れやねじれを防ぐために「内刳り(うちぐり)」といって、背中から内部を刳っているの像も多く見られます。大きな像を造るためには巨木が必要であり、像が重く移動が大変であるというデメリットがあります。
寄木造り(よせぎづくり)は複数の大木を角材にして組み立てて仏像を彫り上げることで、平安時代から現れてきます。丈六仏(じょうろくぶつ)などの巨像の制作に際して考案されたものです。内刳り(うちぐり)を施してから接合する方法が平安時代に考案されました。そのおかげで軽量化に成功し、運搬にも便利になりました。これは平安末期の仏師である定朝(じょうちょう)が完成したものといわれていて、これによって複数の仏師で共同作業できるようになりました。大仏師定朝(じょうちょう)は京都の宇治の平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像を造られました。その仏像が唯一の遺品とされていて、その後の造像の手本となりました。
仏像には色々な素材があり、素材によってその癖がありその技法が異なります。木造は材木の干割れやねじれを防ぐために「内刳り(うちぐり)」をしたり、石仏はその重量から台座などは別々に造ったりします。重量で言えば金銅仏は軽量化のために、中を空洞にする方法が主流ですが、まれに中が空洞ではない像も存在します。
それぞれの素材にはそれぞれの味わいがあるので、その違いを楽しむのも仏像鑑賞の醍醐味と言えます。