仏様の像は色々な物を持っています。これらはどのような種類があるのでしょうか。またどのような意味があり、何故それらを持っているのでしょうか。仏様の持ち物を持物(じもつ)といい、尊名を決定する上で、仏像の手の形の印相(いんそう)と共に重要です。
持物の中でもっとも多く見られるのは蓮の花(蓮華)です。蓮華は蓮や睡蓮の花のことであり、仏教のシンボルとなっています。蓮は花托(花の中心部)が丸くてたくさん穴があいていて、蜂の巣の形に似ていることから蜂巣と呼ばれていて、その蜂巣が変化してハスと呼ばれるようになったと言われています。
インドは暑い国で、涼しい水辺は理想の場所であり、その水面に咲く蓮華は理想の境地を表します。蓮華には泥の中にあっても、水をはじく性質があり、泥に汚されず清浄であり、とても綺麗な花を咲かせる蓮華は、仏教において煩悩を滅却し解脱して涅槃の清浄の境地を目指す境地と合致しました。
この世の中にはしんどいことや苦しいことがあり、それは避けることが出来ませんが、そんな中で徳を積んで精進し、自分なりの花を咲かせるということです。慈悲の仏様である観音菩薩が蓮の花と結び付きが強いです。蓮華が持物の中でもっとも多く見られる理由として、観音像自体が仏像の中でも人気で、もっとも多いからであります。
帝釈天や金剛薩埵、明王部、天部の御法神などが持たれる金剛杵は、もとはインドにおける武器の一種でしたが、仏教に取り入れられ、密教の代表的な法具となり、いかなる煩悩や苦悩も破壊するとされています。金剛とは永遠に壊れないものという意味であり、漢字名からは最高の硬度を持つ杵となります。
金剛杵を持つ尊像としては、帝釈天のほか、金剛薩たをはじめとする金剛部の菩薩、明王部、天部の護法神などが挙げられ、密教系の祖師像も金剛杵を持つことがあります。
密教法具の国宝としては、平安時代初期に空海が唐より持ち帰ったと伝わる東寺の「五鈷杵・五鈷鈴・金剛盤」などが知られます。
金剛杵には様々な種類(独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵・九鈷杵)などがありますが、その鈷(切っ先)の数によって違いがあります。
剣を持つ仏様は文殊菩薩や明王部、天部の護法神などです。武器である剣は、仏教的な意味づけでは、全ての悪を切り伏せて、仏教において克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩、すなわち貪・瞋・癡(とん・じん・ち)を断つこととされています。不動明王が持つ羂索(けんさく・けんじゃく)は、インドの武器の一つで悪の道にいて簡単には降伏しない者を縛り付け、善の道へと引き寄せる意味があるとされます。
如意宝珠は、願いを叶えてくれる宝珠で、中に全ての善い行いを納めています。他の形に炎を表現した火焔宝珠(かえんほうしゅ)や宝珠を三つ合わせた三弁宝珠(さんべんほうしゅ)などがあります。如意宝珠は地蔵菩薩や虚空蔵菩薩、如意輪菩薩などが持たれています。
このように仏様の像は様々なものを持たれています。仏様の持ち物を持物(じもつ)といい、尊名を決定する上で、仏像の手の形の印相(いんそう)と共に重要で、武器には悪や煩悩を退け、信仰者を守護する意味があります。持物の中でもっとも多く見られるのは蓮の花(蓮華)ですが、もっともたくさん持物(じもつ)を手にしている仏像は千手観音です。千手観音はほとんどの仏像の持物(じもつ)を網羅していて、それだけご利益の守備範囲がとても広いことであります。